何度目だAIブーム
掲載日: 2026/09/10 更新日: 2026/09/14
何度目だAIブーム
目次
はじめに
2026年現在、世間ではAIがブームの真っ只中、ネットでもAIサービスの広告も
頻繁に見かける様になり、AI設備への投資も加熱している。
そのおかげか、半導体業界でもAI投資の余波を受け、PC界隈にも影響が出るまでになっており
特にDRAM関連はAI用途とコンシューマー用途で取り合い状態に陥っている。
最近では某パーツメーカーから DDR5 UDIMMが2つ持っているメモリアクセス用の
チャンネルを1つに減らすデチューンを施した HUDIMM規格なる物が出てくるまでになるありさまだ。
かように今のAIブームは世間の関心も高い状態だが、過去にもAIブームと呼ばれるものが何回か存在した
今回は過去のブームがどの様な物だったかを振り返ってみようと思う。
第一次AIブーム : 1950年代 ~
WW2・第二次対戦後あたりから真空管などを使った電子計算機が実用化され、さらにトランジスタや
マイクロプロセッサも順次登場しコンピューターの性能も日進月歩の勢いで向上して行った頃にAIの
第一次ブームが始まる事になる。
第一次AIブームの関連トピックス
ENIAC ; 1946 / 6(真空管)
いうまでもなく、かの有名な最初期の電子計算機
Ferranti Mark 1 : 1951 / 2(真空管)
初の商用汎用コンピューター
IBM 701 : 1952/4(真空管)
メインフレームの誕生
RCA501 : 1959(トランジスタ)
素子にトランジスタを使用、真空管からは卒業
IBM System/370 : 1970 (LSI)
素子に大規模集積回路を採用、性能は大幅UP
Intel 4004 : 1971 (マイクロプロセッサ)
最初のマイクロプロセッサ
Cray-1 : 1975(スーパーコンピューター)
スーパーコンピューターの登場
電子計算機は機械式の計算機では困難だったプログラム内蔵方式が実現され計算機が処理できる問題の
範囲が画期的に広がり、人間の様な振る舞いや判断ができる機械が作れるのではないという気運が
生まれて来た。
この時期から、AIを作るための理論研究が発表され実験的な実装も行われた
AI開発の端緒となる有名な理論研究と実装例
「チェスをするコンピュータのプログラミング」:1949
「計算する機械と知性」:1950/10
ロス・キリアン / アラン・コリンズ
「階層的ネットワークモデル(意味ネットワーク)」:1969
ウォーレン・マカロック / ウォルター・ピッツ
「マッカロック・ピッツモデル」ニューラルネットワークの数理モデル : 1943
「パーセプトロン」ニューラルネットワークを使ったパーセプトロン:1958
チェスを指すマシン
盤面の探索と評価関数による判定を行うプログラムが実際にチェスを指すことが可能になる
リチャード・グリーンブラットの MITの研究チームが作成した 「MacHack VI」と言うプログラムは
1967年のボストンのチェス大会に参加しアマチュアレベルの選手に勝利する成果を達成した。: 1967
自然言語解析
入力された文章をノードに分割・グラフ化して何らかの回答を返すプログラムも作成されはじめる
ダニエル・G・ボブロウの 「STUDENT」と言うプログラムは
英文で出題された高校の代数問題を回答する事が出来た。 1964
ジョセフ・ワイゼンバウムが作った「ELIZA」は意味を理解するのではなく
より人間っぽい受け答えをする事を目指したプログラム 1966
生物のニューロンを模倣(ニューラルネットワーク)
マービンミンスキー / ディーン・エドモンズ が作成した確率的ニューラルアナログ強化学習計算機
機械学習による迷路探索が行われた 1954
第一次ブームにおけるこれらの研究は主に大学内で行われており、研究資金は政府や軍などからの
提供がメインだ、新しく現れた理論が実社会にどの様な貢献が出来るかまだ未知だったので民間からの
資金が入るのはさすがに難しかったのだろう。
思うに、この頃はコンピューター科学の隆盛により、新しいアイデア・新しい理論がどんどん
実現され社会にも楽観的な雰囲気が漂っており政府や軍も研究資金提供に寛容な時期だったのかもしれない。
しかし結局、最初の第一次ブームは結局、当初の楽観的な期待に応える事は出来なかった。
理論は研究室では上手く動いたのだが複雑な現実には適応出来なかったのだ。
それは当時の成長過程のコンピューターでは小さな記憶領域と貧弱な計算能力しかなく現実世界を
記述する為の能力にはまったく足りなかったという側面もあったのだろう。
そうこうしている間に 1970年代にはオイルショックが発生し経済は停滞、政府や軍も以前のように
甘い基準で研究資金を提供することもなくなり、AI研究への資金提供も先細りになってしまった
世間からの関心も下火になりこうして第一次AIブームは終了したのである。
第二次AIブーム : 1980年代 ~
第一次AIブームの終了から10年後、マイクロプロセッサやLSIなどの登場でコンピューターの
小型化が進み巨大なメインフレームと比較しより小型のワークステーションやパーソナルコンピューター
などが普及してきたのもこの頃。
民間企業の現場でもコンピューターの運用が身近になってきたこのタイミングで、AIの研究もより
現実的な問題にフォーカスされるようになって行った
第二次AIブームの関連トピックス
(マイクロプロセッサ)
MC68000 / Intel 80286 [CISC]
1980 ~ プロセッサの高性能化、ワークステーションの普及
メインフレームの様な集中処理の比較としてて分散処理
QCDPAX : 1989 (スーパーコンピューター)
マイクロプロセッサを使用した超並列スーパーコンピューター
IBM RS/6000 Deep Blue(チェスマシーン)
世界チャンピオンレベルの実力を持つチェスプログラム
第二次AIブームの呼び水として注目されていたのはエキスパートシステムだ
エキスパートシステムとは特定の分野の専門家の知識を集約した知識ベースのデータベースであり
コンピューターに解決させる問題の範囲をあらかじめ限定し現在の技術の範囲内で実用的な成果を
得る事を目指している。
当時のコンピューターの能力では扱うの難しい、一般常識のような前後の文脈で意味が変わりうる問題をに
ついては扱うのをあきらめ、コンピューターには明文化され解釈の違いが発生しない様な既知の問題のみ
処理の対象とする発想である。
実際、当時は裁判の判例や感染症の診断をサポートするシステムなどが商用化され注目を集めており
第一次ブームではリーチできなかったAIの実社会での活用が話題になっていた。
エキスパートシステムとは
専門家の知識をデータベース化し、それを元に判断のルールを設定
ルールに従って回答を出力するプログラム。
医療診断支援や融資の審査など限定的なシチュエーションでは実業務にも活用され成功している例もある
身近な所で分かり安い例を挙げるならば、質問を繰り返して人物を特定するアキネーターなどを
想像してもらうと分かりやすいと思う。
実際にビジネス上の成果を出したエキスパートシステム
XCON : 1980
Digital Equipment Corporation (DEC社) が自社のミニコンの VAXを顧客の要望に応じた
最適な構成を得るために作成したエキスパートシステムの最初期の成功例。
エキスパートシステム程の一般の認知度は無かったが、複数のノードが結合されたネットワークにて
データの特徴から結果を得るニューラルネットワークを使った機械学習も誤差逆伝搬ニューラルネットワーク
と言うより洗練された手法も考案させた。
これは、ニューラルネットワークを学習させる際に ネットワークの入力側(特徴)から出力側に流れた
結果を元に目標の値との誤差をネットワークを出力側から入力側に遡りながら閾値の値を調整してゆく
方法であり、入力側から総当たり的にパラメータを調整する場合に比べてより効率よく調整する事が可能となり
パターンマッチングの分野(画像認識や音声認識)の研究を大きく前進させることに貢献した。
ニューラルネットワークを使ったAI実装例
文字認識
LeNet : 1989
ベル研究所のヤン・ルカンが作成した手書き文字を任しくするために作成した
これはアメリカ郵便局の郵便番号を機械で識別するために提供され、継続的にアップデートされた
1998年の LeNet-5 は数字認識の正答率は 90% を超える性能を発揮した。
(誤回答 1%、識別不能が9% というものだったらしい)
家電制御への応用
愛妻号ニューロファジィ NA-F55Y6 : 1991
松下が発売した全自動洗濯機、家電に内蔵したセンサなどを元に0 / 1ではない
中間値を用いたファジー制御で洗濯機の設定をコントロールしていた。
開発の際にファジー制御用の関数パラメータ調整にニューラルネットワークを用いたと言う。
自動運転
DARPAグランド・チャレンジ : 2005 ~
自動車を人間のサポート無しに目的にまでに到着させるレース、機械学習されたAIや
不確実な現実世界で自動車を運転させるリアルタイム制御の研究を促進させる為に
米国防高等研究計画局(DARPA)が開催した。
このグランド・チャレンジは単に研究資金の提供ではなく、公開された大会の
優勝者への賞金という形で資金を出すより実現性重視の大会であった事に注目したい。
第二次ブームでは、上記の様な AIを現実世界に持ち込む様な研究が散見されており
日本でも第五世代コンピュータプロジェクトとして産業分野での応用を目的多とした研究プロジェクト
への支援が通商産業省から行われ、様々な成果がもたらされた。
こうやって見てみると、第一次ブームではAIの実現が研究の目的だったが、第二次ブームではAIを用いて
問題を解決するための手段という性質が強い研究が多かった事が特徴だったのではないだろうか。
そのようにして実現した成果もあり 現実社会への貢献もありながら、目新しい技術も普及してしまえば
注目も薄れて世間からの関心も薄れてゆくのが世の常。
そうこうしているうちに、1990年には日本のバブル景気が終了し、2000年にはアメリカのITバブルも終了し
不景気の煽りを受け企業のAI研究投資も下火となり第二次AIブームもここで一旦の終了となる
AI研究を行う研究者も、コンピューターを使った統計処理や問題の分析・探索、機械制御などの研究に
あえてAIとラベルを付けるような事はせず粛々と研究を続けていたのである。
第三次AIブーム : 2010年代 ~
2000年代後半には第二次ブームでも進められていたニューラルネットワークによる機械学習に
新しくオートエンコーダーというアイデアが追加された。
これは複数階層から構成されるニューラルネットワークにて、その中間層で要素を絞る事で
ノイズ(不要な情報)を除去して特徴(有用な情報)を効率よく学習指せる事をかのうにした。
さらに取り出した特徴をパターンごとに分類し、情報を特徴というより抽象的な状態にすることで
人間のパラメータ調整を経ずにコンピューターが自分自身で学習を進める事ができる「教師無し学習」が
行われるようになった。
現在進行中のAIブームに関連するトピックス
畳み込みニューラル ネットワーク(CNN)
AlexNet : 2012
画像認識コンテスト ILSVRC 2012 にて、人間の調整なしの教師無し学習で
優秀な成績で優勝し大いに注目を集めた
このシステムは、ニューラルネットワークの学習にGPUを使用し高速で学習を実行した
AI用GPU
GeForce 8800 : 2007 (GPU)
GeForce シリーズ 初めて CUDAコアが搭載された
NVIDIA Tesla P100 : 2016 / 4(AI用GPU)
グラフィック用ではなくデータセンター向けGPUボード
生成AI
変分オートエンコーダー : 2014 (VAE:Variational Autoencoder)
オートエンコーダーにて要素を絞る中間層(潜在空間)にて
何らかの確率的なバイアスを加える事により、入力されたデータと
近似した新しいデータ(生成された新しいデータ)を得る事ができる
これらの成果により画像認識や自然言語処理はより高精度となり、一般社会でもAIについての
関心が高まり第三次AIブームが始まった、その後 より早く・より大きくの性能競争が続いているのは
読者の皆さんもすでにご存じの通りだ。
おわりに
今現在、過熱しているAIブームを主導しているのは複数の大規模テクノロジー企業であり
彼らはプロジェクトを動かす為に民間の市場から莫大な投資を集めている。
しかし、AIの性能向上がこのまま集めた投資に見合う成果を投資者に還元できるのだろうか。
過去のAIブームでは AIは企業が競争力を得るための手段と言う意味合いが強かったと思うが
今回はAIを使わせる事が目的になっているような雰囲気を感じる事がある。
(観葉植物の植え替えなんて検索すればすぐわかるし、スケボー動画作ってる暇なんて一般人には無い)
これは自分の勘ぐりすぎかもしれないが、このAIブームがかつての超音速旅客機コンコルドがぶつかった
金の壁にまた違った角度からぶち当たるのではないかとすこし心配している。



